慣例と既成


「お二人の結婚式に、何十人ものゲストをご招待されるのは、どうしてですか?」

こんなことを結婚しようとするカップルにお聞きする。

「みんながするから」以外の理由を明確にすることが、

自分たちなりの結婚式のイメージをつくろうとするお二人にとって、とても大事だからだ。







私事ですが、余命一か月の宣告を受けた同居の義父が、その晩に亡くなった。
「準備を始めないとね」という矢先の出来事だった。

かなり慌てた。



葬儀屋さんがやってくる。
「段取りはこうなります。お通夜の流れはこう。告別式の流れはこう。祭壇・霊きゅう車・棺はどれがご希望ですか?」
これに近いやりとりは、どこかでもありそうな気がしてきた。


そう、ブライダル業界だ。



ちょっと冷静になるために、一度葬儀屋さんにお帰りいただく。

「私たちは、なんのために葬式をするのか?」
そんな不思議なテーマで、家族会議を始めた。

いくつかのポイントがあがる。
そのポイントを実現するために、家族に何ができるか。


実質的に、家族が主催する葬儀にすること。
会場はメソン、祭壇はつくらず花は家族で生けこむ。

進行役は長女(私の妻)が担当し、父のことやお礼をきちんと語ること。
義父の生きた道のりを自作のスライドショーで紹介するなど、

いくつかのポイントを盛り込もうと決めた。



とにかく、葬儀屋さんペースでつくられる
名前を差し変えるだけの台詞がならぶ、葬儀にだけはしたくなかった。

それが義父の死に対して、できる唯一のことだと思った。
ほかのだれでのものでもない、この人だけの葬儀。


あるご夫婦がこんな会話をしながら、帰路につかれたようだ。

「お父さん、私の葬式もあんなふうにしてほしいわぁ」

葬儀屋さんは「一番印象に残る葬儀でした。ぼくのこれからの仕事の転機になると思う」と。



目立ちたかったわけではない。


故人を大切に扱うこと。

家族の思いを大切にすること。

参列の方々に心からの感謝を伝えること。

この3つを短かい準備期間内で、精いっぱいのことをしたということだ。



冠婚葬祭には、「慣例」や「既成」がいつもつきまとう。

でもそれらには、本来の意味を失ってしまったものも少なくない。


それに縛られると、大切なものを見のがしてしまうことがあるのだ。

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