オーナーが語る
メソンウエディング





前オーナーから、メソンを引き継いだとき、
そこにあったのは建物だけだった。
別業界で仕事をしてきた私たち夫婦には、
メソンで成し遂げたい目標も、それを実現させるノウハウもなかった。

あったのは、すでにはじまっている購入資金のローンと、
基本料金10万円の電気料金の支払いに追われる「あせり」だけ。

「早く、なにか始めないと」
とりあえず、前オーナーから紹介だけはされていた、
当時フリーでプランナー役をしていた女性と、
立ち上げの相談を始めた。

ぼくは独身の頃、結婚そのものに関心がなかった。
ましてや、結婚式に興味があるわけもない。

私たち夫婦が一緒に暮らしだしたとき、
知人に説得されて婚姻届をだした。

妻とその友人だけで準備された結婚式には出席し、
見かねた義父が準備してくれた、親族だけの食事会にも出席した。

文字通り出席しただけだけで、
おそらくその席の支払いも義父がしてくれたのだと思う。

そんな経験しかない僕が、結婚式にまつわる事業を立ち上げることには、
少なからず後ろめたさがあったが、「背に腹は変えられない」。

ホテルや式場で、なにが行われているのか、全く見たこともないので、
とある会場の「ブライダルフェア」なるものにもぐりこんだ。






衝撃的な体験だった。

「模擬結婚式」が始まった。
神妙な顔をした本物の牧師に向かって、
結婚するわけもないモデルの男女が入場して、神に誓う。
結婚しないのに……。
信仰心はないが、こんな行為が許されていいのか、と思った。
本当の結婚式すら、うそっぽさを感じさせてしまうではないか。

場所を移して「模擬披露宴」。
司会者がとつじょ、巨漢の黒人シンガーを呼びこみ、大音量でゴスペルを歌いだす。
あっけにとられる見学者に、踊りを強要しだす。

いたたまれず、会場から逃げ出した。


オーベルジュメソンでは、自分たちにとって違和感のあることはすべて排除した、
普通の感覚でできるウエディングをめざそうと思った。
本当に意味のあることだけで、積み上げられるように。

あれから、10数年。
たくさんのお二人との経験から、
わたしたち独自のスタイルをつくりあげていくことになります。










二人が結婚を決める時って、どんな時でしょう?

別々の異なる価値観の中で生きてきた二人が、お互いをかけがえのない存在と認めた時でしょうか?

私自身、結婚式には強い憧れやイメージを持っていたわけではなかったのですが、親同士の挨拶で、結婚式に派手なことはしなくても…、いっそウエディングドレスもいらないのではないか、と私の意見を全く聞かずに言われた時、不覚にも泣いてしまった私。

その話を聞いたCAの友人が「それはダメよ!一生に1度のことなんだから着るべきよ!」と体型が同じだったこともありハワイで安く買って来てくれたのでした。

今にして思えば、白いウエディングドレスは、花嫁の個性を生かす「オシャレ」というよりも、結婚式の主催者としての「身だしなみ」なのではないか、と思うのです。

主人はというと礼服に蝶ネクタイ、ブートニアは挿していましたが、文字通り参加しただけ…








そんな私たちですが、ウエディングの仕事をしていく中、それぞれのカップルから学んできたことが沢山あります。

私たちは、結婚式当日をどんな一日にしたいか、カップルそれぞれの結婚式の意味を見出されるよう、じっくりお話しをします。

結婚に至るまで、実に多くの人の支えがあったことを改めて感謝し、それを伝える唯一無二の場であるということ。

結婚式は儀式ではなく、自分たち二人が自立を宣言し、幸せになっていくという決意をあらわす場であるということ。

本当に来ていただきたい方をご招待されたら良いと思います。その方々は、お二人をあたたかく見守って下さると思います。

もしも、二人だけで決まらない時は、いつでも私たちにご相談ください。

お茶を飲みながら、Mesonでゆっくりお話しましょう。








スタッフが語る
メソンウエディングの不思議




メソンに新しく来た僕には、
ウエディングの「作られ方」が不思議だった。

結婚式のお見積を出そうとするだけで、多くの項目があり、どんどんと決めたいのが営業と思い込んでいた。

メソンでは、ご相談の冒頭「何故、結婚式をするのですか?」という問いかけをすることがある。最初に聞いたときは驚いたし、面倒な手順やなと思った。

そんな問いかけに対して、即答する方は皆無に近い。面食らっているお二人も多いけれど、お二人は、なんとか回答を絞り出しはじめる。

森の中が素敵だったので。
ここの美味しい料理を楽しんで欲しいんです。

なるほど。しかしこれは「なぜメソンを会場にしたのですか」の答えですよね、と折り返す。

「そーですねえ」と脳みそが回転をはじめて、ゆっくりと新郎、新婦の「それまでの歩み」が浮かんでくる。やがて「感謝を伝える」かなあ。例えば、誰に、何を伝えたいのか?などと会話が続く。
そこから、お二人の家族や仲間や仕事や趣味などの関係、二人の出会いのエピソード、お互いの両親との会話などが「ストーリー」になっていく。

当日のコンセプトの卵が生まれる瞬間だ。

そしてもうひとつ、大事な「立ち位置」がある。それは、結婚式の「主催者」は、お二人であるということ。これは僕自身が、「目からうろこ」の認識だった。





結婚式=冠婚葬祭=しきたり/習慣=つまり主催者は誰?
うーん、ご両家?だとしたら、親が主催?じゃあないよなあ。

当日の「主役」は新郎新婦というコトバはよく聞くけれど
「主催」は誰だ?という考えは、メソンで初めて触れたテーマだった。

これは、招待状は誰が出しているのか?と考えると分かる。
他のどんな会でも、ぜひお越し下さい!とゲストを招待しているのが主催者。その立ち位置から考えてみませんか、ということもお話しをする。

こうして進行表には、どんどんとお二人のオリジナルなストーリーと表現したい内容が組み込まれていく。


僕がメソンに勤務した初日、携わったパーティは、こじんまりとした少人数のお食事会形式だった。

お食事の前に、新郎新婦が、なぜあなたをパートナーに選んだのかを語った手紙があった。お互いに、内容は当日まで内緒にして書き上げた手紙。
それは、おそらく最初で最後のメッセージ。長い手紙では決してなかった。

新婦から新郎に向けたメッセージがひとこと。

「あなたのその手のぬくもりが好きです」「ずっとその手のぬくもりを感じて生きていきたい。」

次のお料理のサーブをする手が、少しだけ、震えてしまった。

一人一人、顔が違うように、それぞれの物語は違う。
だから、結婚式の内容も、一組一組違う。

そんな至極当たり前のことが、ようやく僕がわかるようになるのは、何組かのウエディング準備に携わってから後のことでした。